天才石井則仁が突きつける狂気の舞

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踊るしかない


▲世界画廊コレクション展Vol.6(東京・渋谷)での石井則仁(自身の写真作品の前で)

石井則仁(29)。舞踊家・振付家・舞踏 山海塾舞踏手。18歳でストリートダンスを始め、コンテンポラリーダンス・舞踏と幅広く活動する。蜷川幸雄や宮本亜門の演劇作品にも出演……ピカピカのプロフィールにしばしおののく。踊り手である彼が、このたび渋谷で開催された「世界画廊コレクション展Vol.6」に写真作品2点を出展。SUGOITOKYO編集部は会場へ急行。彼への単独インタビューに成功した。「狂気・エロス・普遍的な美」の3つをテーマに掲げて表現活動を続ける石井。彼が躍る理由は「踊るしかないから」。心臓が自ずと脈を打つように、呼吸が無意識に行われるように、彼は彼であるために、生きるために、踊り続ける。踊らずにはいられないからだ。彼にとって「生きることとは踊ること」。何らかの事情で踊れなくなった暁には、彼は自らの首を吊ってもいいと覚悟する。狂気を表現するための彼の肉体には、余分な肉など一切付いていない。絞り込まれたシャープな身体は、熊の心臓でさえも一突きで貫通する鋭利な刃物のようだ。

殺人者



原体験は幼少の頃からの「人間不信」。誰にも何も期待できない、絶望的な孤独の中で育まれた極端な狂気。自分が他人を殺めるシーンを妄想し続けた。5年前の秋葉原無差別殺傷事件が決して他人事とは思えない。あの犯人は決して特殊ではなく、何らかの外的な要因が作用して自分が加害者になっていたとしても、まったく不思議ではないと思える。自分だけではない。いつでも、誰にでも、他人や自分を傷つける狂気は潜んでいる。それを踊りで、演出で、表現したい。表現したい理由などない。ただ表現せずにはいられないのだ。正直に言えば、踊るのは面倒だ。できることなら、踊らずにいたい。しかし体が、心が、それを許さない。マグロは常に動き続けていないと死ぬ。石井も表現を続けることで生命を維持している。石井の舞台を観た観客が、気が狂って自殺したとしても、申し訳ないとは思わない。そもそも知ったことではない。石井は単に「生きている」だけだ。他人が他人の人生をどう生きようと、それは他人の勝手だ。

クラウドファンディング



狂気の舞は、海を越える。石井の舞台作品「SAMON」が2013年11月末に開催されるSeoul International Choreography Festival に選出された。これに伴い、ソウルでの公演が決定。そのための必要資金を、クラウドファンディングサイトのCAMPFIRE(キャンプファイヤー)で調達中である。資金は必要だ。しかし、資金調達の手段としてだけではなく、活動の宣伝手段としてもこのサイトを活用したいと考えている。石井の表現する「狂気」が韓国でどのように物議を醸すか楽しみだ。

CAMPFIREでの支援金募集ページ

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深海魚
ライター

深海魚

光がまったく届かない暗黒の世界に生息する人間。人生で必要な知恵はすべてR25で学んだ。右投げ右打ち。好きな駅名は「御花畑」。

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