【足長おばさん】部屋に閉じこもっている少年にひと夏の思い出をプレゼントしてみた。

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【少年との出会い】


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当時、私が住んでいた向かいのアパートに、いつも寂しそうにベランダに座っている少年がいた。小学校中学年くらいだろうか、その少年は、大抵ぼんやりしているか、ときどきとり憑かれたかのように二重飛びの練習をしていた。そしていつも失敗していた。縄跳びに飽きると、またなにをするでもなく、物思いにふけるのだ。彼と初めて話したのは、私が引っ越し用の荷物を降ろしていたときだった。彼の方から挨拶をしてくれたのだ。感じのいい子だなぁと思ったのを覚えている。それから少年は私を見かけるたび声をかけてくれるようになった。オシャレして出掛けようとすると「デート?」とはにかんで、スッピンで部屋着のような格好だと「買い物ですか?」と使い分けてくるのであった。

【少年の家庭の事情】


家庭の話はデリケートな話題になるので聞いたことはなかったが、彼はおそらく母子家庭なのだろう。父親を見かけたことがなく、母親が夜遅く帰ってくるのを何度か見かけたことがある。小学3~4年生くらいであの落ち着きようは、ここから来るものではないかと想像していた。おそらく、普段は一人でお留守番しているのだろう。なので、たまに家の近くの神社で友達と遊んでいる姿を見ると、良かったね、と心のなかで微笑んでいた。そういった色々な事情があるのだろう、日曜日に少年が出掛けているのを見たことがなかった。母親はいるようだったが、疲れて寝ているのだろう、少年はまたいつものようにベランダでぼーっとしていた。私はなにか、彼の思い出になるような出来事を作れないかと考えた。

【宝の地図作成】


当時、私がドハマりしていたのがワンピースだったため、宝の地図を片手に冒険に繰り出したい、と常々思っていた。その宝の地図を、少年がいつも座っている庭の近くに置いたらどうするのか、見てみたいと思ったのだ。私は神社までの簡単な地図を書き、宝箱が埋まっている場所に星印をつけた。洗面器にコーヒーをいれて、紙を浸す。乾いたら少しだけ破れたような切り込みをいれて、古ぼけた地図の完成だ!宝箱の中身は当時、子どもたちのなかで流行っていたポケモングッズ一式を入れた。これでガッカリすることはないだろうと思い、星印をつけた場所に隠した。

【少年の反応】


宝の地図はコルクのついた透明のビンに入れて、地図が見えるようにした。私は自分の家のベランダからそっと見守ることにした。少年はまたいつものようにベランダでくつろぎ始めた。ふと思い立つかのように縄跳びをしていると、宝の小瓶に気づいてくれたのである。少年は「え?なにこれ?」とでも言うように周りをキョロキョロ見渡して、中身を確認した。確認するやいなや、「お母さーん!!」とすごい勢いで家に入っていったのである。しばらくすると、方位磁石とスコップ、宝の地図を持った少年が出てきたので、私は大変満足し、観察をやめた。後日、神社で少年が友達と通信対戦をしている様子を見ることができた。少年のDSには、私が宝箱に入れたポケモンストラップがぶらさがっているのが見えた。

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祭(まつり)
ライター

祭(まつり)

ワンピースのルフィ、H×Hのゴン、クレヨンしんちゃん、声優の高山みなみさんと同じ5月5日生まれ。おうし座、亥年、男の子の日生まれと待望の男子かと思われたが、生まれたのは病弱な女子だった。生粋の左利き。動物占いは群れを好まない「狼」。ショップ店員に紫色が異様に似合うと過去5回言われたが、本人は深海の蒼色好き。

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