男前すぎるお笑い芸人「内布大貴」の野望

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写真:堀越瑞生

「こういう空間を作りたかったんです」。そう呟いた内布大貴の視線の先で歓談する20代前半の男女十数名……ここは新宿御苑にほど近い、キッチン付のパーティースペース。内布が持ったグラスの中で、琥珀色の液体と氷が、まるで恋に落ちた男女のように、溶けて、混ざり合う。もう午後9時を過ぎているというのに、室内を照らす暖色系の光と、若い女性たちのはしゃぐ声のせいか、昼間かと錯覚する。今回のように内布は、親しい友人や、出会ったばかりの友人を集め、そこでお笑いを披露する。それだけではなく、参加した人同士が楽しく交流できるように、さまざまな仕掛けを用意する。当日、会場では初対面の者同士が仲良くなっていく。その様子を少し離れた場所からウィスキーグラスを片手に眺めるのが、内布にとって至福の瞬間だ。



意外な事実だが、内布はかなりの内向的な性格の持ち主だ。人前で騒ぐのも好きだが、騒いでいる時でさえ、騒いでいる自分を見ている他人の様子を冷静に観察している。内布が組んでいるお笑いコンビでの相方は、相馬。相馬の持ちネタに、内布の太い黒縁の眼鏡をずり下げて「ごはんですよ!」と言う芸がある。内布は、相馬によっていつもネタにされるその黒縁眼鏡の奥から、目の前の観客を、その背後にある社会を、そしてその社会を形成している人間の存在を、冷静に見つめている。自称「根暗人間」だからこそ、お笑い芸人が務まるのかもしれない。チャップリンであれ、北野武であれ、松本人志であれ、一世を風靡したエンターテイナーは、心のどこかに必ず「闇」を抱えているように見える。そして内布にもそれが見え隠れする。

野望


写真:堀越瑞生

内布の将来の野望は、テレビ番組で雛壇に並んだお笑い芸人を相手にする、島田紳助のような司会者になることだ。芸人たちは、目の前の観客やテレビの向こうの視聴者の心理を見透かして芸をする。司会者は、さらに一歩後ろから芸人たちの心理を見透かして、番組が活性化するよう彼らを使いこなす。芸人がサーカスの像だとすれば、司会者は像使い。お笑いを喜んで観る能天気な人々には決して務まらない仕事である。これは、人間の内部を徹底的に観察・分析する内布ゆえに目指せる領域にほかならない。そんなクールな内布も、ふだんはイケメン芸人としてきちんとおちゃらけて、女子のハートを鷲掴みしている。そのギャップがすごい。野望は野望のまま、安易に人に見せないから野望なのだ、ということを彼に学んだ新宿の夜であった。

 

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深海魚
ライター

深海魚

光がまったく届かない暗黒の世界に生息する人間。人生で必要な知恵はすべてR25で学んだ。右投げ右打ち。好きな駅名は「御花畑」。

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